異色の本

本棚にひっそりとたたずむ、1冊の本。
他の本と比べ、そこに似つかわしてくない見た目だ。
破れた表紙と、薄茶色に染まった紙の色から、
その本の歴史を漂わせている。
まさに異色のオーラといえる。
ただこの本が、
自分の人生に “いっしょく” 加えてくれた。
あるべきではない本。
なぜこの本がここにあるのか。
思い出そうとすればするほど、
幼き日の記憶が微かに蘇る。
小学校低学年の頃、自分は図書係なるものを仰せつかっていた。
といっても、係とは名ばかりの別段仕事もないような係だったと記憶する。
強いて言うならば、教室の後ろにある学級文庫の管理が主な仕事だろう。
ある日、何気なく本棚に目をやると、
これまで見たことない本が目にとまった。
「漢字がいっぱいで変な本」
それが最初の印象だった気がする。
とにかく、小学生の低学年には似つかわしくないその本に、
違和感を感じた。
「ここは図書係として!」
当時の自分にそんな大層な気概があったかは定かではないが、
とにかく担任の先生に相談した。
「学級文庫じゃないから、図書室の先生に聞いてくれるかな?」
そう言われた自分は、図書室へと向かった。
図書室は好きだった。
子どもながらに感じる、荘厳で重厚感のある空気感。
どこか秘密の場所に来た気になる。
司書の先生に、お使いの内容を伝えると、
その本を手に取り、
「図書室の本でもないわね。もう一度担任の先生に聞いてもらえる?」
まさかのたらい回しだ。
「えっ、また先生に聞くの?」
そんな事を考え、途方に暮れた幼い自分。
「キミは一体どこから来たの?」
「一人ぼっちなの?」
小さな手でも握れる文庫本を、
ぎゅっと握りしめた。
どうしていいかわからないが、
自分の机の引き出しにそっとしまった自分。
そんな記憶が薄らと残っているような、
いないような…。
“いっしょく”を加えてくれた本
先日、『1冊まるごと「完コピ」読書術』について書いた。
ボロボロになるまで読みこんだ本が、本棚にあったら素敵だなぁと感じた。
しかし、自分の本棚にはすでに年季の入った本が1冊ある。
それがこちら。

たくさん読み込んでボロボロになった訳ではなく、
すでに古かった本を、いまだに所有している感じだ。
小学生の頃に、どうしようもなく持って帰り、
それ以来自分と共に渡り歩いてきた本。
この本は、食べ物をテーマにしたエッセイ。
その渋さは、大人向けとしか言えない。
今で言うなら、「孤独のグルメ」的なテイスト。
小学生には不釣り合いの本だが、
歳を重ねるにつれて、この本の面白さを理解していった。
食に対するこだわり。
元々「お腹いっぱいになれば良い」という、
質より量の貧乏舌タイプの自分。
それが、この本から食の面白さのようなものを学んだ。
特に「鍋焼きうどんの正しい食べ方」は秀逸。
この食べ方を試したいが、いかんせん自分は体が頑丈な為できない。
気になる方は、ぜひ読んでほしい。長いから。
この本は、自分のライフスタイルに新たな “一色” を加えてくれた。
こだわりの “一食” という色を。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
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