自分の感情と現実に起こったことが、絶妙にマッチしない事がある。
人付き合いの苦手な私が、
違う支店の取引先の社長に気に入られた。
その社長のところに商品を納品する役目に、
他支店の私が指名された。
人から認めてもらえることがない私にとっては、久々に笑顔になる出来事だった。
いざ、張り切ってその日を迎えると、
最悪な1日となった。
まず特注の商品がめちゃくちゃ重い。
しかもそれが100個。
それを坂の上まで運んでくれって。
過酷すぎるだろ。
さらに指名してきた社長が当日不在だと?
褒められたかったんだ、その社長に。
聞きたかったんだよ、「来てくれてありがとう」が。
ちきしょう。
やったよ。
やりましたよ。
期待されることがない私は、
ここで頑張ればって下心も一緒に抱えて、坂を何往復もしましたよ。
その結果わかった。
こんな簡単に頑張れちゃうから、
指名されたんだよ。
言葉選ばずに言えば、使い勝手がいいし、利用しやすかったんだろう。
まぁ、ダイエットになったからいいさ。
自分の支店に戻って、一連の流れを上司に報告する。
それを聞いた上司は、
「なにそれウケるんだけど」
「全然お気にじゃないじゃん」
…ギャルかよ、てめーは。
ウケねーよ。
ゴリラフェイスのオヤジが「ウケる」とか「お気に」なんて使ってんじゃねーよ。
担当の支店に文句言えよ。
すげぇ疲れたんだぞ。
「荷受けの社長がいなかったってガーチャー?しかも荷物降ろす環境もチョベリバだったらしいじゃん?ウチの部下が疲れすぎてぴえん超えてぱおんだったってよ?こんなんゆるされへん」
たぶんギャル語ってこんな感じだろ?知らんけど。
会社を出て、イライラしながら夕飯の買い出しに行った。
すると、あるポップが目につく。

サバ缶100円。
しかし、左に並んでいるやつのサイズが違う。
せっせと品出ししている近くの店員さんに聞いてみる。
作業中なのに申し訳ない。
「値段一緒なんです」
マジで?
じゃあデカい方買ったらお得じゃん。
7個あったので買い占める。
大変なことした後はいい事もあるもんだ。
先ほどのイライラがウキウキに変わり、ルンルンでレジを通す。
ピッ…。
「さば水煮 128円」
…はっ?
108円じゃないの?
正直128円でも全然安い。
ただこっちはデカいサバ缶が100円で買えて、
ラッキー、最高、今日一日が報われた!モードになっている。
この状態で20円払うのは、×100のガッカリ感になるのだ。
そんなことになるくらいなら、いらない。
セルフレジで店員さん呼び出しボタンを押す。
来てくれた店員さんに事の流れと、だからキャンセルしたい旨を伝えると、
「確認してきますのでお待ちください」と一言残して猛ダッシュ。
戻ってきたと思ったら、
「お客様、今回こちらのミスですので100円にさせていただきます」
「いやいや、大丈夫ですよ、キャンセルで」
何がなんでもサバが食べたい訳じゃない。
「いえ、確認しましたところ、ウチの従業員が確かに100円と伝えてしまったので」
「…じゃあ、すみません、ありがとうございます。」
…。
……。
………。
情けない。
自分が情けないわ。
28円くらい気持ちよく払えよ。
クーポンとかの割引なら気持ちがいいけど、
人のミスでの割引は申し訳ないわ。
作業中なのに質問に答えてくれた店員さん、申し訳ないです。
私のせいで怒られてたら本当にすみません。
自分はミスばかりで、怒られる人の気持ちが痛いほどわかる。
いや、わかるから痛い。

その日のサバ缶は、酷使した身体によく染み渡った。
1日の後味は悪いが、サバの後味は最高だ。
やはり、感情と現実は絶妙にマッチしていない。

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