孤独の最後 【一人言 読書感想文】

一人言

『孤独』モーリス・ルヴェル著 を読んで

重苦しい孤独

前回、『孤独からはじめよう』を読んで、あまりにも明るくたくましい孤独に出会ったのが衝撃でした。

そんな中読んだモーリス・ルヴェルの『孤独』は、短編小説にも関わらず、

暗さと重苦しさを味わえる孤独でした。

読み進めるにつれ、重厚感のある霧がかかる暗い森を一歩一歩進んでいるような気分でした。

深夜に、タバコの煙で包まれた薄暗い部屋で、その世界観に入り込んで読みたい作品でした。

本の世界での追体験

この物語は、寂しい家で暮らす一人の老人のある夜を描いた話なのですが、

孤独な感情や寂しさが、すごく表現されている作品です。

自分の現状と近しい主人公に対して、

自分の姿を投影し、親近感を抱く。

「自分だけじゃない」

そう思わせてくれる。

孤独なのは自分だけじゃないという、傷の舐め合い。

明るさを目にした後の暗闇は、暗さの中に冷たさを感じる。

自分の求める、共感できる孤独がこの作品にはありました。

ラストに描かれる孤独の情景

しかし、その反面、自分はこのままでいいのかとも思いました。

なぜなら、主人公の言葉が、あまりにも将来の自分に当てはまりそうだったからです。

「おれはもう老境に入ってしまった。何をやったって駄目だ。家庭なんか持つまい。決して持つまい。死んだ後には何一つ残るんじゃなし、思い措くことも更にない。明日も、明後日も、また首輪をかけられて、同じような日を送るのだ。そして遅かれ早かれ貧しい犬のように死んでゆかねばなるまい。人はおれの棺が通るのを見て、『会葬者もないこの死人はどんな人か』と怪しむだろう――それも瞬間だが――」

引用 『孤独』/モーリス・ルヴェル

この後に続く話のラストは、短編小説とは思えない重厚感がありました。

その潔さと、一瞬命が吹き込まれたと思わせる情景描写が、

これまで、何章もの主人公の人生を読んできたように感じさせます。

孤独について、新たに考える作品になりました。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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